重要な記録(1)
事件に関する重要な記録をここに公開する。ICレコーダーによる記録である。
吹き込まれた声は基本的に可美村(かみむら)緋那(ひな)のものだけである。彼女は警視庁の刑事であると共に、IZUMO社航空機墜落事故の唯一の生存者である可美村貴代(たかよ)ちゃん(事故当時十三歳)の叔母でもある。
貴代ちゃんは事故の怪我によって、長らく植物人間状態と見なされていたが、先日、意識をはっきりと回復していることが確認された。会話が出来るほどには回復していないため、奥歯に電極を取り付け、歯を噛み合わせると電子音が鳴る仕組みでコミュニケーションを可能にした。
イエスの場合は二回、ノーの場合は一回、歯を噛み合わせてもらった。
貴代ちゃんの精神安定のため、部屋には緋那さんと貴代ちゃんの二人だけである。カメラなども設置していない。

以下が記録である。

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