但馬くん
同窓会の席で、僕の隣に座っている洋子がこう切り出した。
「ねぇ、但馬幸平って覚えてる?」
その名前を聞いた瞬間、懐かしい思い出がよみがえってくる。
但馬くん…。彼は6年生の途中から転校してきた。
それまで誰ともしゃべらなかった僕に、いつも話しかけてくれた。
休み時間には、学校の七不思議、先生たちのあだ名、クラスの女子たちの品評…。話題が尽きることは無かった。
授業中、二人で窓の外を眺めながら、流れる雲のかたちを見て、「あれは○○君に似てる あの形は先生の輪郭ソックリ!」とヒソヒソ話しては、二人でクスクス笑いあったりしたものだ。
それから、まだまだ思い出はある。
今まではただ退屈だった運動会や遠足も、彼のおかげで楽しく、懐かしいものとなった。
ただ…彼は少し変わっていた。
それまでどんなに楽しく話していても、他のクラスメイトから何かを言われると、急に険しい顔になって押し黙るのだ。
…何を言われてそうなっていたんだっけ…。
などとボンヤリ考えていると、洋子の向かい側に座っている田中が身を乗り出し、しゃべり出した。
「おお、覚えてるよ。あいつ、少し変わってたよな。」
「やっぱり? 気味悪かったよね。」
「あいつ、いつも一人でブツブツしゃべってたよな。一体何と話してたんだろうな…」
カテゴリ:その他
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