通学路の意味
高3の時の話、美化委員の俺は水曜日の朝六時から校内清掃をしなければならなかった。
美化委員会は3チームに分かれていて、俺は水曜担当の第三美化チームに入った。
「第三美化チーム」というネーミングセンスはいかがな物か。大学四年になった今でもおれは思う。
俺は当時「3美化(賛美歌)」と略して言ったからここではそれで表記する。
3美化には飯島っていう、学年で一番暗い奴がいた。飯島は休憩時間いつも読書をしているやつ。
余談だが彼の数少ない友達もまたネクラな奴ばかりだった。類は友を呼ぶって本当なんだとそんとき知った。
飯島と俺は3美化で一緒になってから、知らない仲じゃなくなったから昇降口でばったり会ったりすると「おう」と挨拶したりする。
でも実際は飯島と仲良しだなんて周囲に思われたくない、って気持ちもそのときはあった。
俺は部活に入ってなかったし、彼女も居なかったから放課後はだいたい直帰だった。
校門を出るところで飯島に出会った。
「おう」と一声かけてサヨナラしようとしたけど、飯島が「加藤君(←俺の名前)も駅方面でしょ?」なんて言うもんだから俺は仕方なく2人で駅まで歩くはめになった。

加藤君はいつも放課後何やってるの?って彼が聞いたからゲームセンターか、友達とマックで駄弁るか。そんなかんじって俺は言った。
飯島は「加藤君もゲームやるんだー僕も結構なゲーマーだよ」って。話が膨らんでしまった。
高校は道草禁止されて無いから良いよな、小中なんて通学路まで指定されて。しかも良く厳守してたよなー。と俺。
飯島「通学路の意味知ってる?」しらねーよと俺。
飯島「通学路は、最短距離とか交通量の大小とか繁華街の有無とか色々加味されて設定されるんだけどもう一つ大事な要素があるんだ。」
俺は犬の糞の有無?と聞いた。飯島は首を振った。ツッコミを入れて欲しかったんだけど。
飯島「お地蔵様の有無。」彼は続けた。
「通学路は大抵、小さなお地蔵様があったり神社の側を通るような経路になってる。毎日土地の守り神さんに顔を見せて通る事で、守護者の恩恵を頂いてるんだ。」
なるほどねー、ちょっと待てよ俺の小学校の通学路にはお地蔵様も神社も無かったぞ。と俺。
飯島「公園とか無かった?地形的にも霊的にも安定した土地に作られている事が多い。公園を作る際地中に石神様(石碑のようなもの)を埋めるしね。」
うーむ無かった。と俺。
飯島「そういう場合もある、特に新しく出来た小学校中学校とかは何も知らずに通学路を設定するみたいだね。」
へえーと俺。よく無病息災でいられたもんだなーとか思った。
飯島「行きに挨拶をしたなら帰り道もきちんと顔を見せないと駄目だよ。地蔵様がお怒りになるもの。道草禁止ってのはそういう事さ。」
それを聞いて背筋が震えた。
っていう話でした、お粗末でスマ祖。
そのあと駅前のゲーセンで飯島と格ゲーをし、ボッコボコにされたという余談を添えて。

Good

カテゴリ:学校
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