くねくね その3
俺小さい頃、多分幼稚園位の年20年位前くねくね見たわ。

親父と弟と俺で、たまに山にピクニックに行ってたんだよ。
ピクニックっつても直ぐ近くの栗山、家の所有じゃなかったから不法侵入ってやつか(笑)でさ、俺、基本的に動くの面倒臭がって行きたくなかったんだけど、山に行く途中で親父がジュースを買ってくれるんだよ。
俺はコーラ、弟はコーヒー牛乳。それが目的で付いて行ってた訳。

山頂に向かいながら、親父が天狗の鼻とか何とか瓜?(赤い実)とか指差して教え俺達を楽しませてた。

ここまでの記憶ははっきり覚えてるんだけど、その次の記憶は親父が居ない。弟と二人っきり。
親父が居ないのが不安で不安できっと先に頂上に向かったんだと泣きながら弟の手を引いて頂上を目指した。
もう少しで頂上という所で弟が何かを見つけた。
「まー君(あだ名)あれなぁに??」
弟の指先の先100m位離れた木の影にゆらゆらしているグレー?色の何かがいた。
分からなかった、何回もこの山に入ったがあんな物見た事が無かった。
手足をジタバタしている。顔は見えない。
俺は思い出した。親父に誕生日プレゼントとして貰った双眼鏡が背中の小さなリュックに入ってた。
「あれ」が何なのか異常に知りたくなってリュックを下ろし開き取り出した。弟も見せて見せてと言っていたが、「後でね」といい覗きこんだ。
覗き込んだモノは想像を絶するモノだった。1、2、…分、もう見たくもないのに目が離せない。弟の「まーくん!!」の声がなかったら1人で見ていたらどうなっていたか分からない。多分発狂してた。
でもこれは言える断言できる。あれは踊っているんじゃない。

苦しがってた。

顔も見た。色んな顔だった。男の子、女の子、若い男、女、年取った男、女。
顔がドンドン変わっていく、まるで1秒毎にスライドしているかの様に。

だが全ての顔が同じ表情。「苦悶」。

俺は荷物を投げ捨て弟と一緒に下を目指して走った、俺も弟も何度も転んだ。でも、そんな痛みよりもアイツに捕まる方が何倍、何十倍も怖かった。
途中でお爺さんに会ったが、まず何よりもこの山から下りなければと思った。
数分後見慣れた鳥居が見えた、出口だ。その時、後から声がした。
親父だった、何故か怒鳴っている。2人して父親に駆け寄って泣きながらくねくねしていた物の事を必死に説明しようとしたが伝わらなかった。
親父の話では少し目を離した瞬間に居なくなったらしい。
結局、俺が弟連れて山に入って行った事になった。
この日以来山には行ってない。また見てしまいそうな気がするから。

Good

カテゴリ:シリーズもの
[9]戻る
[0]HOME