霊園の前
これは私が大学生のときの話です。
梅雨があけたばかりの夏のある日のことです。
その日の夜の12時くらいに大学の近くに住んでいる友達から、今数人で集まって飲んでいるから来ないかと誘われ、私は車に乗って友人宅へ向かいました。
友人の家へ行く途中には霊園があり、その霊園は心霊スポットとしてそれなりに有名な場所でしたが、別に霊園の前を通るだけで、中に入るわけではないので特に怖いと思ったことはありませんでした。
その日も特に気にすることもなく、友人の家を目指しました。
熱かったので窓を開けて走っていたのですが、ちょうどその霊園の前を通ったときにとても冷たい風が通り抜けた気がしました。
当時私が乗っていた車には、助手席に人が乗っているときにシートベルトをしていないと、シートベルトのマークが点灯するようになっていたのですが、その時にふとそこを見るとマークが点灯していました。
そのマークは、助手席に荷物を置いたりすると付くことがありましたが、その日は何も置いていませんでした。
そこで私は怖くなり、なるべく助手席のほうを見ないようにして友人の家へ急ぎました。
そして、友人の家の100m程手前で信号に引っかかった時に、早く青になれと念じながらもう一度そのマークを確認すると、やはり付いていましたが、見てから一瞬の間をおいて消えました。
私は少しだけほっとしましたが、信号が青になると急いで友人の家まで走らせました。
友人にその話をするとしばらく考えてから、
「そこの信号のとこにある家はさ、子どもはいないんだけどすごい仲の良い年取った夫婦が住んでたんだよね。ただ、一週間くらい前にそこの奥さんが亡くなったらしいんだ…」
と言い、それを聞いて、その奥さんが旦那さんに会いに行きたかったんだと思うと怖くなくなりました。
しかし、数日後大学で友人に会うと、青白い顔をしてこう言いました。
「あのときのやつさ…、会いに行ったんじゃなくて、迎えに行ったのかもしれない」
その日の朝、そこの家の旦那さんが原因不明の死体で発見されたそうです。

Good

カテゴリ:心霊・妖怪
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