悪戯の果て
大学生の近くのアパートに実家から越したときの話。

家賃が安いのは、バス停から遠いものだと思っていました。
数週間は何事もなく暮らしていました。
しばらくしてから、朝起きるとカップの位置が動いていたり、玄関の靴がバラバラになることがありました。
まずいと思いつつ、カップがどこにあろうと、割られなければ困らない。
部屋のいる存在を特に気にせず生活をしているうちに、だんだん悪戯が頻発するようになりました。
カーペットがめくれる、いつのまにかリモコンが箪笥の中にある、等。
子供かお前は、などとつっこみを入れたくなるような可愛いものばかり。
僕はなめていました。

ある日の晩、レポートをまとめ終わった僕はベッドに入りました。
ぐーすか眠る夢の中、僕は電車の夢を見ました。車掌さんがやってきます。
「切符を拝見しまーす」
カチッ。
夢で、切符を切る歯切れのよい音が鳴り続けていました。
目が覚めると、もう朝でした。寝ぼけ眼で部屋を見回すと、思わず叫びました。
部屋を解約したのは、その日の昼でした。
それは、もう僕にはとうてい悪戯でかたづけられない事件だったのです。

僕が眠る枕の端を、びっしりとホチキスでとめられていたのですから。

Good

カテゴリ:心霊・妖怪
[9]戻る
[0]HOME