笑う首
中学生の頃。
生徒会の仕事をしていたら部活に遅れてしまった(バドミントン部)。
体育館に駆け込み、素振りやフットワークの練習をしている皆の邪魔にならないよう、ステージの上で準備運動をしていると……。
体育館の出入り口の敷居の上に、おかっぱ頭の丸顔の女の子の首が載っており、笑っている。
実はその体育館の出入り口は、通路から一段高くなっていたので自分は
「ん〜? あの女の子、うつぶせに寝転がって、首だけ持ち上げて敷居にのせてんのか? へんなことするなあ。大体どうして出入り口の周辺で運動しているやつらは、あの女の子のこと注意しないんだ?」
などと考えていた。
なんとなく落ち着かない気持ちで準備運動を続けていると、フットワーク練習中の後輩のラケットに隠れて、女の子の首が一瞬見えなくなり……。
出入り口が見渡せるようになると、女の子の首は既に消えていた。
そのときは
「ああ、誰も気付いてくれないから飽きちゃって、帰ったのね」
と考えたのだが、家帰ってから思い返したら、
(1)うつぶせになっていた女の子が帰ったのだとしたら、立ち上がったはず。けれど、自分はずっと出入り口を見ていたのに、彼女が立ち上がったところは見なかった。
(2)もしかすると彼女は匍匐前進で帰ったのかもしれないが、そんなことをする意味が分からない。そもそも彼女が消えた直後に別の人間が体育館に入ってきたが、そいつは何も言ってなかった。匍匐前進している女の子がいたら、何かコメントしただろうに。
(3)そういえば、敷居の上に女の子の首が現れる直前に、自分は体育館に通じる長い廊下を駆け抜けてきたのだった。そのとき、廊下には誰もいなかった。なのに、自分が体育館に入った直後に、敷居の上に、女の子の首が現れている。
ということに気付いてしまい、とても不思議だった。
ちなみにその後、部活の仲間が体育館の出入り口の脇で練習しているときに、
「足跡がする。誰か来た」
といったのに、誰も入ってこなかった事が数回あった。そのたびに仲間は扉を開けて廊下を見回し、誰もいないことに困惑していた。
その体育館も取り壊され、今はもうない。
カテゴリ:不思議・不気味
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