墓地を歩く

ある会社員(以下Ｋさん)が、週末の夜に仲間と居酒屋に行った。つい酒量を過ごしてしまい、気が付けばもう終電も終わっていた。
Ｋさん以外の人はめいめいタクシーを拾って帰ったが、Ｋさんだけは酔いざましに歩いて帰ることにした。
しばらく歩くと車通りの多い道に出た。その道路沿いは共同墓地になっていて、墓地の壁が向こうまで続いている。
ふと前の方を見ると、背広姿の男が何人か並んで歩いていた。
彼らも終電を逃したクチだろう。そう思ったＫさんは、彼らの後に付いていくことにした。
…ところが、しばらく行くと徐々に灯りの少ない道に入って行き、しまいには街灯の一本も無いような路地に来てしまった。ここで彼らを見失っては道に迷ってしまう。Ｋさんは駆け足で前の男達に追いつこうとした。
するとそのうちの一人が突然振り返り
｢お前は付いてくるな！！｣

…ふと気が付くと、Ｋさんは車通りの多い交差点の真ん中に立ちすくんでいた。目の前を大型のトラックが、クラクションを鳴らしながら横切っていった。
慌てて、転げるようにして歩道まで辿り着き、何とか息を整えて顔を上げると、歩道の角に花が供えてあるのが目に入った。後日分かったことだが、ほんの数日前、そこの交差点で車数台が巻き込まれる事故があり、会社帰りのサラリーマンが何人か亡くなっていたそうだ。

ｶﾃｺﾞﾘ:不思議･不気味

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