真夜中の玄関
自分、自宅住まいで家族と暮らしてるんだが、バイトから帰宅して仮眠を取った後、レポートやるために深夜に起きた。2時くらいだったと思う。
家族はもう寝てて、家は真っ暗。とりあえずコーヒーを飲もうと思ったのと、パソコンがリビングなので1階まで降りていった。
階段を降りると、右にトイレのドア、目の前に洗面所への扉、左手に出ると玄関前を通ってリビングの扉がある。まぁどこにでもある家なんだが。
リビングに入る時に、なんとなく玄関の扉を見ると、2つある鍵が2つとも開いてたのな。

普段そんなことないから少しびっくりしつつも、裸足のまま玄関から身を乗り出して急いで鍵をカシャン、カシャンて閉めた。瞬間。
前触れなしにガチャッ、て、本当に間髪開けずに扉を開けようとした音が聞こえて、目の前で扉が少し揺れた。
まさかだったので本気でびっくりして、しばらくそのままフリーズしてたんだけど、もしかして家族が外に出てた?てまず思った。
だからドアの確認穴?から外を窺ったんだけど、真っ暗な空間が広がってるだけで何もない。扉の左の方が縦に磨りガラスになってるんだけど、そこから外灯が点いてるのを確認できただけ。だけど、人の動きに反応して外灯が点く仕組みだから、誰かがいたのは確実。
家族だったら、鍵を閉めた音が外からも聞こえただろうから、そこにいるはずだし、遠慮なしにインターホンを鳴らしまくるからとりあえず家族じゃない。
こんな時間だからどうせろくでもない人間だろうと思い、他の戸締りをしっかり確認して、コーヒー沸かしてリビングでレポートを開始した。
そこでちょっと不思議に思ったのが、リビングでいつもペットの猫と犬がその辺に転がって寝てるはずなんだけど、猫がいない。先ほど玄関に不審者がいた気配があったのに、犬が吠えたりしていない。
まぁでも猫は2階で家族と寝てることもあるし、そんなこともあるだろうと大して気にしてなかったんだ。

録画したドラマ見ながらレポートやってて、もっかいコーヒーを飲もうと思った頃に、また玄関でガチャガチャッ、てドアを開けようとする音が聞こえた。
自分の膝の上で寝てた犬が、足音でもしようものなら耳を立てて吠えるはずなんだが反応なし。
ドアを執拗に開けようとしているようで、絶えずガチャガチャやってるのは聞こえてる。時間は2時41分。
もう一度ドア穴から確認しようかとも思ったけど、ドアの外に誰かがいるのは確実なので、怖いし、とりあえず2階へ行って父親を起こそうと思った。

そっとリビングのドアを開けて、玄関の方を覗くと、ドアが少し揺れながら、ガチャガチャッ、ガチャガチャッ、て継続的に音がしてる。
なんとなく、目の前を通ってることが知られたくなかったので、もう一度リビングに戻って、テレビの音量を大きくして、屈みながらそっと2階まで移動しようとした。
すると急に音が聞こえなくなった。玄関の方を見ても、本当に何の気配も感じられない。
先ほどまで煩いくらいだったから、余計に不気味だったんだけど、何故か自分はドアの外を確認しようとしてた。ホラー映画の登場人物とかが「そっち行くなよ馬鹿じゃねぇのw」と明らかにやばい方へ誘い込まれるように行ってしまう気持が分かった。
吸い込まれるように、そっとドアの前まで行って、ドア穴を確認する。
真っ暗だ。何も見えない。
…あれ?真っ暗?と思ったら、真っ暗な視界が少し揺れた。
何なんだろうと思ってじっと見てると、少しずつ、視界が開けてきて、真っ暗だった原因が人だったってのが分かった。
緊張で頭がぼーっとしてきて、心臓がすごくドクドクいってて、音が聞こえなくなって、視界が狭まって、もうその穴の中を見ることしかできなかった。
目が合って、表情が分かって、顔が分かって、全身が見えた。
思わず悲鳴をあげたと思う。聞こえなかったから分かんないけど。
それは女で、目を見開いてるんだけど無表情で、肌の色がほとんど白に近くて、まるで死人みたいなんだけど、それは明らかに自分だった。

そのまま意識を失ったらしくて、朝玄関で倒れてるところを家族に発見された。
リビングにはやりかけのレポートもあったし、飲んだ後のコーヒーカップもあったし、何よりあのリアルな感覚が残ってるから、夢ではないと思うんだけど、一体なんだったのか分からない。
最後に見た顔が焼き付いてて、鏡見るたびにドキッとする。

一番ぞっとしたのは、発見されたのが玄関の中じゃなくて、外。鍵は掛かってたらしい。
この時期リアルに洒落にならないし、自分の精神面がかなり心配になった。
でも自分の精神が可笑しくなったにせよ、鍵掛けたまま外に出るなんて不可能だけど…むしろ幽霊とかお化けの類であってほしいと思ってる。

ちなみに、猫はあの夜から行方不明だ。

Good

カテゴリ:不思議・不気味
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